天然石の名前はなぜこんなにややこしい?
― 有名な石で分かる、業界の暗黙の了解と正しい見方 ―
天然石を見ていると、こんな疑問を持ったことはありませんか?
- 同じ石なのに、名前がいくつもある
- 産地がはっきり書かれていない
- 処理については説明されない
実はこれ、天然石業界ではごく普通に起きていることです。
しかも理由を知ると、「怪しいから」ではないことが分かります。
今回は、誰もが知っている天然石を例にしながら
このややこしさの正体を、できるだけ分かりやすく解説します。
① 天然石には、最初から「名前が複数」ある
まず知っておいてほしいのは、
天然石は最初から一つの名前しか持たないものではないということです。
例①:アメジスト
アメジストは、実はすべて同じ鉱物です。
- 鉱物名(学術名)
クォーツ(石英) - 宝石名
アメジスト
ここまでは共通ですが、
見た目や成長の仕方によって、次のような名前が使われます。
よく見かける流通名・商品名
- ガーデンアメジスト
内包物が風景のように見えるもの - ファントムアメジスト
成長途中の層が影や山型に見えるもの - アメジストエレスチャル
結晶が複雑に成長した原石タイプ - ベラクルスアメジスト
メキシコ・ベラクルス州産の細長い結晶で有名なタイプ
👉 すべて同じ「アメジスト(石英)」です。
違うのは「模様」「成長の仕方」「見た目の特徴」。



例②:ローズクォーツ
ローズクォーツも同じです。
- 鉱物名:クォーツ
- 宝石名:ローズクォーツ
よく使われる流通名
- スターローズクォーツ
光を当てると星状の光が見えるもの - ディープローズクォーツ
色が濃く、ピンクがはっきりしているもの - マダガスカルローズクォーツ
産地名で呼ばれるタイプ
なぜ名前が増えるのか?
- 見た目の違いを伝えたい
- 写真だけで特徴を分かってもらいたい
- 商品として説明しやすい
つまり名前は
「違いを説明するためのラベル」なのです。
② 産地名が付くと、石の印象は大きく変わる
次に分かりにくくなるのが「産地」です。
例:アメジストの産地
- ブラジル産アメジスト
流通量が多く、価格は比較的手頃 - ウルグアイ産アメジスト
色が濃く、結晶が細かいことで有名 - ザンビア産アメジスト
赤紫が強いタイプが多い
産地名は
品質の傾向を示す目安ではありますが、
産地名だけで価値が決まるわけではありません。
③ なぜ産地や処理が、はっきり説明されないのか?
ここからが、いわゆる
「業界のタブー」「暗黙の了解」と呼ばれる部分です。
結論はシンプル
流通のどこかで情報が「不明」になるから
④ 天然石は、情報が消えやすい商品
天然石は次のような長い流通を経ます。
- 採掘
- 現地ブローカー
- 加工(加熱・放射線・含侵など)
- 輸出
- 卸
- 小売
この途中で
- 正確な産地
- 処理内容
- 元の状態
が書類として残らないことがほとんどです。
👉 結果
誰も嘘をついていないのに、誰も断言できない
⑤ 「なぜ説明されないのか?」の本当の理由
よくある誤解は
「隠している」「誤魔化している」ですが、
一番多い理由はこれです。
■ 単純に「知らない」
- 仕入れた時点で情報が無い
- 卸も分かっていない
- 推定できる材料が無い
👉 知らされていなければ、説明できない
⑥ 誠実な店とは、何でも知っている店ではない
ここは、とても大切なポイントです。
誠実な店ほど、正直に「分からない」と言える
- 分からないことを断定しない
- 推測は推測として伝える
- 知っていることだけを説明する
これが、本当の意味での誠実さです。
⑦ 処理石・染色石・合成石は悪なのか?
例①:シトリン
多くはアメジストを加熱して作られます。
👉 業界では昔から一般的。
例②:翡翠
多くが含侵処理されています。
👉 処理されていても価値はあります。
例③:アゲート(メノウ)
鮮やかな色の多くは染色です。
👉 分かって買うなら問題なし。
例④:合成ルビー
人工的に作られた結晶。
👉 天然石として売るのはNG
👉 合成石そのものが悪ではない。
大切なのはここ
問題は
処理そのものではなく、説明が無いことです。
⑧ 結局、どう判断すればいいのか?
情報が少ない世界だからこそ、
判断基準はこれで十分です。
石そのものの美しさと、価格が見合っているか
- 名前が立派か
- 産地が有名か
それらは付加価値であり、本質ではありません。
⑨ 小売販売者として、ウルグアイ産アメジストを扱う理由
私が扱っている
ウルグアイ産アメジストは綺麗だから好きです。ただそれだけ!
理由はとてもシンプル。
- 色が濃く、深みがある
- 結晶が細かく、美しさが分かりやすい
- 名前や説明がなくても、石が語ってくれる
産地についても
- 書類で断定できなくても分かりやすい!
実物の美しさと価格のバランスを大切にしています。
最後に
天然石業界が分かりにくいのは、
嘘が多いからではありません。
- 情報が途中で消える
- だから断定できない
その結果、この業界の人は長年の勘で仕事をしているんです。
だから、ややこしいんです!
名前より、産地より、
目の前の石を見てください。
ウルグアイ産アメジストの深い紫は、
きっと説明がなくても、伝わるはずです。


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